- このシリーズでは宿泊予約サイトについて説明します。宿泊予約サイトは日にち単位で商品を予約する機能を有します。民宿、キャンプ場、賃借ロッジ、レンタル業などに利用できます。今回は6部屋の宿泊予約ができるサイトの要件定義フェーズについて説明します。
要件の洗い出し
- 宿泊予約サイトなどのITツールの要件の洗い出しの手順は以下の通りとなります。
- ストーリー
- ITツールを利用したときのストリーで、業務全体がどのように改善されるかを示し、利用目的や利用方法が明記されている。
- ビジネスモデル
- ITツールを利用したときのビジネスの流れをフローチャートで示したもの
- ITツールの利用範囲を明確にする。
- システムイメージ
- ITツールの利用部分をさらに詳細化した図
- だれがどのように利用するかのイメージと概略の機能を示す。
- 要件抽出
- ITツールに必要な機能要件と利用環境要件など
- WordPressで実現できるITツールの機能要件と利用環境要件とのする合わせ
- WordPressで実現できない要件の対応の検討
- ストーリー
- 以下に要件洗い出しのプロセスを図示します。
ストリー
- 宿泊予約サイトは民宿、キャンプ場、レンタル業などのビジネスで利用するITツールです。
- ITツールの導入には必ず、導入の目的や期待する効果があるはずです。このような目的と利用シーンをまとめたものをストリー(大規模なシステムではシステム化構想といいます。)といいます。このストリーでITツールの実現性を検討します。以下に単純なストーリーのサンプルを図示します。
- このサンプルでは、目的を①『部屋の稼働率を上げること』としています。そこで、宿泊予約サイトを使うことで、②『ネットによる集客』と『ネットで簡単に予約』を実現し、顧客を増やします。さらに、③その顧客とネットでつながり『顧客への宣伝継続』や『顧客の情報入手』を行います。④集めた情報を分析してさらなる改善につなげていきます。
- このストーリーで利用するITツールの実現性は、既存のWordPressの宿泊予約サイトと比較して現実的かどうかを判断する必要があります。WordPressの宿泊予約サイトのデモサイトなどを調べることでイメージができます。以下に参考となるデモサイトのURLを示します。実現性を検討したうえでITツール導入の可否を判断します。
https://hbdemo.getmotopress.com/#_ga=2.215455639.165437849.1612745682-1517481747.1611553599
ビジネスモデル
- ビジネスモデルは、ITツールを利用した場合のビジネスの流れをプロセスに分解したフローチャートになります。ビジネスモデルにより、ITツール、つまり宿泊予約サイトの利用部分が明確になります。(これはシステムスコープといいます。)
- 最終的には、WordPressで実現する宿泊予約サイトの機能に制限されますので、最初のうちは、プロセスを概略で定義します。また、宿泊予約サイトを利用しないプロセスは、さらに単純化することでビジネスモデルが簡素化できます。
- 以下に単純なビジネスモデルのサンプルを示します。
- 上記のビジネスモデルは宿泊予約サイトのプロセスを『民宿の特徴と優位性をネットで宣伝』、『魅力ある宿泊プランを宣伝』、『多くのネットユーザが検索・参照』、『ニーズにマッチした顧客が宿泊プランを予約』と4つの概略で示しています。また、宿泊予約に関係ないプロセスも単純化しています。宿泊予約サイトの適用範囲が明確になります。
システムイメージ
- ビジネスモデルで宿泊予約サイトのプロセスが明確になりましたので、宿泊予約サイトの部分を詳細化してシステムイメージを作成します。システムイメージは宿泊予約サイトの『だれがどのように利用するかのイメージ』と『概略で定義できる機能』を示します。以下にシステムイメージのサンプルを図示します。
- システムイメージはシステムによって図示の仕方は千差万別となります。システムの専門家であればUMLのユースケース図で表現しますが、システムの専門家でない場合は、『誰が、どのような機能を使うのか』が明確になった書き方であれば問題ありません。
- 今回の宿泊予約サイトでは管理者の利用(左側)と顧客の利用(右側)に分けて記載されています。管理者だけが利用する機能、顧客が利用する機能、管理者と顧客が連携して利用する機能があります。
- また、顧客の情報や利用状況などをデータベースに蓄積し、そのデータを利用して分析を行います。分析は宿泊予約サイトでやるか、別でやるかはここでは規定しません。
要件抽出
- システムイメージから、必要条件を洗い出します。この必要条件が宿泊予約サイトの要件となります。つまり、要件は宿泊予約サイトで実現したい内容となります。以下に今回の要件のサンプルを示します。
- 上記では、ビジネスモデルやシステムイメージが単純なため、要件も単純になっています。現実的には、今回の要件をベースに、適用したいビジネスの特徴や観光の特徴などから発生する要件を追加していくこととなります。
- WordPressで実現できる宿泊予約サイトの機能とすり合わせた結果、すべての要件を実現できるかどうかはまだわかりません。最終的に無償で実現できる宿泊予約サイトの機能とすり合わせます。今回はまずこの要件の状態で完了します。
要件定義
機能一覧
- 要件から機能を洗い出します。
- 要件リストから、必要となる機能をマッピングしていきます。この作業は一般的な予約サイトの機能を知っておく必要があります。
- 予約サイトの開発経験がないと機能のマッピングは難しいのですが、他の予約サイトを利用してみて、利用者側の機能をあらかじめ調査しておき、わかる範囲でマッピングしていきます。
- 以下に機能一覧のサンプルを示します。
ページ構成図
- 今回の宿泊予約サイトのページ構成のポイントは、以下の通りです。
- ホームページは看板の役目となり民宿のイメージを表現する。
- 観光スポットページ、通信ページで民宿の特徴と優位性をアピールする。
- プランページと通信ページは投稿で作成する。
- プランは一覧表示から顧客が気に入ったプランを選択してから予約画面に進む。
- 予約確認は第三者からアクセスさせないため、メールのリンクからのみアクセスできるようにする。
- 以下にページ構成のサンプルを示します。
ページレイアウト
- 今回の宿泊予約サイトのページレイアウトのポイントは、以下の通りです。
- 全てのぺージは、内容を大きく見せることを優先するため、1カラムとします。
- プランページ、予約ページ、予約確認画面はプラグインのレイアウトをそのまま利用します。
- 以下にページレイアウトサンプルを示します。
マスターデータ
- マスターデータはWEBサイトを構築する際に必要となる情報をデータ化したものです。開発するWEBサイトによって、情報の内容と量が変わります。今回の宿泊予約サイトでは『民宿の基本情報』、『プランリスト』、『宿泊約款』が最低限必要となります。以下に『民宿の基本情報リスト』と『プランリスト』のサンプルを示します。
- プランリストでは宿泊者数、サイズ、別途パターンなどを明記します。価格は、季節や部屋の配置などで変わる場合は、別に価格リストを準備しておきます。
まとめ
- 宿泊予約サイトの要件定義フェーズについて説明しました。要件定義フェーズでは要件の洗い出しと洗い出された要件から要件定義を行い、必要なドキュメントを作成します。
- 要件洗い出し
- ストーリー
- ITツールを利用したときのストリーで、業務全体がどのように改善されるかを示したもので、利用目的や利用方法が明記されている。
- ビジネスモデル
- ITツールを利用したときのビジネスの流れをフローチャートで示したもの
- ITツールの利用範囲を明確にする。
- システムイメージ
- ITツールの利用部分をさらに詳細化した図
- だれがどのように利用するかのイメージと概略で定義できる機能を示す。
- 要件抽出
- ITツールに必要な機能要件と利用環境要件など
- WordPressで実現できるITツールの機能要件と利用環境要件とのする合わせ
- ストーリー
- 要件定義
- 機能一覧(要件から機能を洗い出す)
- ページ構成図(要件、システムイメージから、利用しやすいページ構成を決める。)
- ページレイアウト(利用しやすいページレイアウトを決める。(ほかのサイトを参照))
- マスター準備
- ビジネス基本情報
- プランリスト
- その他(宿泊約款他)
- 要件洗い出し
- システムドキュメントは膨大なものからメモ程度のものまであります。どのようなドキュメントを作成するかは、システムの作り方や規模に依存します。WordPressベースでプログラムの追加修正を行わずシステムの開発をする場合、WordPressとプラグインソフトのドキュメントがそのまま利用できますので、作るドキュメントも簡略化できます。特にシステムを作るためのドキュメントより、利用目的、効果、設定のためのドキュメントが重要となってきます。
- 次回はWordPressとプラグイン(Hotel Booking Lite)を利用した宿泊予約サイトの設定手順について説明しますのでご期待ください。
- 本講座では極力簡単に説明していきますが、それでも、わかりにくい点やご意見があれば、記事下のコメント欄、もしくはContactメールでお知らせください。皆さんと一緒にこのコンテンツを作っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
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