今回は、ECサイトのリリースと運用について説明します。リリースの手順は、ビジネスサイトとブログサイト編で説明した内容と同じで、完成判断、動作確認、リリースの順で行いますが、機能が増えた分、作業量が多くなります。作業漏れをなくすため、しっかりドキュメントを準備して確認しながら行います。

運用は、販売行為に対する法的な責任が発生しますので、トラブルを回避するため、必ず運用マニュアルを作成し作業漏れがないようにします。運用マニュアルは業務運用マニュアルとシステム運用マニュアルに分けておく必要があります。業務マニュアルは、ネットショッピングビジネスのやり方に沿って業務手順を明記します。システム運用マニュアルはブログサイトやビジネスサイトと同様の保守作業に関する手順を明記します。

リリース

リリース手順について、1.完成判断、2.動作確認、3.リリースの順番で説明します。今回、最も注意するところは動作確認です。ECサイトでは多くの設定をしましたので、それらの動作確認をもれなく実施する必要があります。金銭授受が発生しますのでしっかり確認しましょう。

  1. 完成判断
    • 要件定義での条件(要件)がクリアしているかを判断します。ただし、今回はECサイト専用プラグインであるWooCommerceを利用していますので、ショッピングサイトの一般的な機能は網羅しているはずです。実現できていない機能が本当に必要か再検討する必要があります。
    • 以下に要件から定義した機能の実現可否を示します。
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    • 配送時の保険や箱詰め、納品書作成、会計情報の出力は実現が難しい機能ですが、必須ではないので今回は機能なしとします。
    • 上記以外で実現できない機能はプラグインを追加することで実現できますが、スタート時には必須でないので、機能的には完成と判断します。
      • 実現できない機能が多くあります。WordPressとWooCommerceを利用したECサイト構築では、アプリケーションベースの開発になりますので、本来アプリケーションの機能に合わせて、要件定義をしますが、今回は、アプリケーションの機能を考慮せずに要件定義したために、実現できていない機能が増えました。再検討した結果、実現できていない機能は必須ではないので今回は完成と判断しています。
    • 以下に実現できたページ構成図を示します。赤枠の商品ページは投稿ページではなく、商品投稿ページで作成する以外は、当初の想定通りに作成できました。
    • 以下に実現した画面レイアウトを示します。画面レイアウトは固定ページはすべて2カラムになってしまいますが、実用上問題ないのでこのレイアウト問題なしとします。
  • 上記のように要件定義書の機能、ページ構成、画面レイアウトを確認した結果、ネットショップサイトを行う上で大きな問題はないので完成と判断しリリースすることとします。
  1. 動作確認
    • リリースする前に動作確認が必要となります。システムも製品ですから実際に利用する前にすべての確認テストが必要ですが、WordPressを利用することでテストは省略できます。WEBサイトの品質はWordPress本体、テーマ、プラグインの品質に依存します。ただし、プラグインやテーマがWordPressのバージョンに対して互換性が確認できていない場合、プラグインとテーマの品質保証ができなくなりますので、すべての機能をテストする必要があります。そのため、テーマとプラグインは、利用しているWordPressとバージョンの互換が取れているものを選ぶ必要があります。
    • ECサイトは、設定が多く金銭のやり取りも発生しますので、動作確認を正確に行う必要があります。また、誤字や脱字、画像違い、利用規約の内容など外観確認も確実に実施します。確認項目が多いので、必ずテストリストを作成し、確認結果を記録しておきます。以下にテストリストのサンプルを示します。
  1. リリース(ブログサイトのリリースの例となっています。)
    • テストリストの確認ですべてOKになったらシステムのリリースをします。リリースの流れはテスト環境から本番環境に移行する手順になります。レンタルサーバの会社によって手順が異なりますのでここではお名前ドットコムでの例を動画で示します。
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: WordPress講座313.jpg

運用

  • リリース後は運用フェーズに入ります。運用マニュアルはリリース前に準備します。運用はシステム運用と業務運用の2種類となります。小規模ショップでは一人でやる場合もあります。システム運用はトラブル対応以外は定型業務が主体となります。業務運用は顧客対応なので臨機応変な対応になります。

システム運用について

  • 以下にシステム運用の項目と内容のサンプルを表に示します。
  1. セキュリティ管理
    • ウィルス対策はサーバで対応しますのでレンタルサーバ会社が行います。基本的には何もする必要がありません。レンタルサーバ会社の対策を確認しておきましょう。
    • 不正アクセスとサーバー攻撃はプラグインソフトで対応します。運用手順としてはそれらのプラグインソフトの確認手順、確認の頻度、アラームが発生した場合の対応となります。
    • 脆弱性対策は、WordPress、テーマ、プラグインの開発元で対応しますので、常に最新版にアップデートするようにします。ただし、アップデート手順はリリース管理の手順書に明記します。)
  2. リリース管理
    • リリース管理は、WordPress、テーマ、プラグインなどソフトごとに手順書を作成します。手順は新バージョンの確認、バックアップの取得、バージョンの記録、更新後の動作確認などとなります。
  3. コンテンツ管理
    • 固定ページは変更管理手順を明記します。
    • 投稿ページは既存ページの変更手順と新ページのリリース手順を明記します。
    • メディアライブラリは追加、変更手順を明記します。
  4. ユーザ管理
    • ビジネスサイトは複数のユーザが利用しますので、ユーザの権限を最初に規定しておく必要があります。2-5段階ぐらいに権限を規定して、ユーザに付与します。
    • 手順はユーザ申請手順、ユーザ付与手順、ユーザリスト更新手順を明記します。
  5. 機能改善
    • 機能改善は、改善レベルを規定しておく必要があります。要件の変更レベルになると機能改善のレベルではなく、プロジェクトを実施する必要があります。
    • 改善には時間やコストが発生しますので必ず要望の実施可否判断を行う必要があります。
    • 手順は改善要望手順、改善実施判断手順、改善手順、リリース手順など明記します。
  6. バックアップ
    • バックアップはレンタルサーバで行っているサービスもありますので、そちらと合わせてルールを決める必要があります。
      • 例えば、お名前.comのサービスではサーバ単位で毎日(保存期間2week)自動バックアップされます。そこで、サーバ単位での毎日のバックアップはお名前.comのものを利用して、運用としては毎月のバックアップにする。
    • ルールは定期的なバックアップと任意のタイミングのバックアップについて決めて、それぞれの実施手順を明記します。
    • バックアップは手動でも取れますが、プラグインを利用して簡単にバックアップ/復元ができます。以下にプラグイン(UpdraftPlus)の利用例を動画で示しますので参考にしてください。動画はビジネスサイト編と同じものになります。
  1. 広告管理
    • アフィリエイトを実施する場合、広告収入などを管理します。
    • 収入管理なので業務側でやるか運用側でやるか決めます。
    • 手順は利用するアフィリエイトサービスプロバイダーによって若干異なります。
  2. トラブル対応
    • トラブル対応は、トラブルのレベルに合わせ対応手順をあらかじめ決めておく必要があります。大きな障害時には、すぐにサイトを停止する必要があります。
    • トラブル対応は、必ずレポートにまとめておきましょう。
    • 手順はトラブル発生報告手順、トラブルレベル判断、対応手順、クロージング手順などを明記します。

業務運用について

  • 業務運用は非定型な業務が多くなりますが、運用マニュアルには、項目をしっかり明記しておく必要があります。商品や顧客によって業務が異なりますが、実施する項目は共通となります。以下に業務運用の項目と内容のサンプルを示します。
  1. 商品管理
    • 商品の新規追加や登録内容の変更に対応します。そのマスターデータとなる商品リストと商品カテゴリーリストの管理を行います。さらに画像も管理します。
    • 在庫管理は商品の売れ行きに従って適正に行います。
    • ユーザレビューの内容を確認し、必要であれば対応します。
  2. オーダー管理
    • サイトの注文画面にオーダーの一覧が表示されますので、進捗によってステータスを変更してオーダーの進捗を管理します。
    • ステータスによって商品の発送や顧客対応を行っていきます。
  3. 顧客管理
    • 顧客リストをベースにサービスを進めます。
  4. 売上管理
    • レポートとアナリティクスの画面から売り上げを把握し、経理台帳に計上していきます。
  5. アクセス管理
    • Google Search ConsoleとGoogle Analyticsにより顧客のアクセス状況を把握し、サイトを改善していきます。
    • レポートとアナリティクスを確認し、売れ筋の商品を確認します。
  6. 集客・販促プロモーション
    • アクセス解析からメルマガ、SNS、キャンペーン、新商品の投入などの活動を行います。

まとめ

  1. ECサイトのリリースと運用について説明しました。リリースは完成判断⇒動作確認⇒リリースの手順に従って行ってください。
  2. リリースの動作確認は大変重要です。ECサイトでは金銭の授受が発生しますので、設定通り動くことをしっかり確認する必要があります。そのため、今回提示したようなテストリストを作成して確実に確認していきます。
  3. 運用は、必ず運用マニュアルを作成し、手順を明確にしておくことが重要です。運用マニュアルはシステム運用と業務運用に分けてマニュアル化します。しっかりしたマニュアルと記録を取ることで、トラブルに強いサイトとなります。
  4. 業務運用は非定型な業務が多くなりますが、作業項目は共通ですので、マニュアルには項目をしっかり明記しておくことが重要です。

本講座では極力簡単に説明していきますが、それでも、わかりにくい点やご意見があれば、記事下のコメント欄、もしくはContactメールでお知らせください。皆さんと一緒にこのコンテンツを作っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

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